今月のオススメNo.1シネマ
村上 豊(桐朋女子中・高等学校教諭)
『みすゞ』
『みすゞ』は、天才詩人と注目を浴びている金子みすゞの半生を描いた映画である。が、正直に言うと、実は当方、金子みすゞの名を目や耳にしたことはあっても、彼女の詩や人生については何も知らなかった。言い訳めくが、ある意味それも当然。現在は教科書にもその童謡が掲載されているという彼女の詩が、長年埋もれていた時の流れの中から発掘されたのは1980年代半ば、その生涯が紹介されたのは5年程前のことである。
童謡とは言っても“朝焼小焼だ/大漁だ/大羽鰮の/大漁だ。/浜は祭りのようだけど/海のなかでは/何万の/鰮のとむらい/するだろう”という詩に示されているように、その芯には透き通るような感性と激しい思いが込められている。養子に出された実弟との許されない愛と意にそまぬ結婚。不実な夫との生活の後、26歳で自らの命を断った彼女の生涯を思う時、時代と社会の影の大きさを感じる。叔父と母に扮する中村嘉葎雄と水島暎子が深みのある演技でそれを象徴する。みすゞ役の田中美里、夫役の寺島進も好演。