感謝を込めて『満願』を
三鷹市在住の長田清さん、太宰治作品の朗読を始めて10年になる。もともとは登山を趣味とし、日本の山のみならず、ネパールなど世界の山へもトレッキングに出掛けて行った。現在お歳は86歳だ。
「そもそも朗読を始めたきっかけは、腰を痛めて山登りができなくなった時に、何かしたい、でも何ができるかと考え、自問自答の据えに見つけた新しい趣味だった。教室に通って、対面朗読をしてもよいという許可がおりてからはテープに入れて障害者に送ってあげたり、公民館で朗読したり。その間点字も勉強したりね」。あれからもう十年経つんだなぁと、初心の頃を振り返る長田さん。
もう年だから……今更などと考える人が多い中で、70代になってから新しい生きがいを見つけようとした行動力、今となっては桜桃忌にはなくてはならない存在だ。「年が変わると、今年の桜桃忌が来るまで生きていようと考える。皆さんに喜んでもらえるのが楽しみでね」と語る長田さん。朗読の達人・長田さんの名調子を、毎年楽しみにしているファンは沢山いる。
作品によって練習時間はまちまちだが、例えば朗読時間35分の『走れメロス』は月4回の練習を最低2年やらなければ人前でやってもいいという許可が下りないとのこと。失敗したとき、一体誰に教わったんだということになるので、先生は厳しいのだ。同じフレーズを何十回、何百回と繰り返し練習する長田さんの台本は、強調するところ、ゆっくり読むところ、調子を変えるところなど色分けをしてびっしりと書き込んであった。「嫌になるようじゃだめだよね。追求して追求して、やっと先生からOKが出たときに、自信を持ってやれるようになるんだから」…………